vol.2
ゆくい堂 株式会社
台東区東上野

お客さんが「こういうのに暮らしたい」
それを作ってるだけ
「ゆくい」という言葉の意味を知っていますか?
奄美地方の言葉で「休憩」「休息」という意味だそうです。
「ものつくり」、新プロジェクトの数々、「小さな工務店」という意識、人と人とのつながりを大事にしているという「ゆくい堂」の代表、丸野さんのところへインタビューに行ってきました。浅草不動産のスタッフは丸野さんのところで一時期お世話になっていたこともあり、長いお付き合いということもあり、のんびりとした内容です。

代表の丸野信次郎さん。
情熱あふれる「ものつくり」の人。
――何歳になったんでしたっけ?ハハハ(笑)。
丸野
歳はいいじゃん。普通に話そうよ(笑)。
――出会ってから…何年でしたっけ?僕20代だったと思いますよ。
丸野
八年前くらい?前の会社にいたとき…岩間さんが浅草不動産を立ち上げる3年前?
――それくらい前ですかね?ゆくい堂が前の浅草のオフィスを借りるときに出会ったんでしたよね。丸野さんは僕にとって友達…兄貴…いや、師匠。「リノベーション」って知らなかった僕に、いろいろと教えてくれましたね。
丸野
ホント、そうだよね(笑)。出会いのとき…最初「何だ、この人!?」って、思ったでしょ?
――はい(笑)。「RCでいろいろ好き勝手にやっていいの、頂戴!」って。そういう人いなかったですからね、当時。それが縁で出入りするようになってからの付き合いですね(笑)。ところで「ゆくい堂」作って何年でしたっけ?
丸野
「ゆくい堂」はねぇ…16?17期目?あれ、何期目だったかな?一人でやってたときも長かったんだよね。最初は向島でひとりでやってて。それから会社を起こして、今は15人位いるかな?
――そうそう、よく見ているんですけど「rooms」のHP(リノベーション物件を主に扱うHP)、あれは丸野さんが作ったんですよね?
丸野
そう。あれは趣味で僕が作りましたね。
――やってることが不動産屋ですね(笑)。
丸野
完成したら人にやらせようと思ってたんだけど、みんな忙しくなっちゃって。結局今も「rooms」のHPは僕が作っています(笑)。
――「ゆくい堂」のHPもカッコいいですよね。コンセプトとか何かありますか?
丸野
特に何も指示はしてないです。
「ゆくい堂」のHPのデザインは広報がやってますね。
――今のオフィスもですけど「ゆくい堂」が作っている物件はみんなカッコいいですよね。
丸野
そう?ありがとう(笑)。あれね、廃材。廃材使いまわして作ってます。
――廃材を使うことに何か理由ってあるのですか?
丸野
もったいないから。もったいないから始まってはないと思うけど…なんだろうね…好きなんですよね。昔ね、新築のプレハブのモデルルームを作ってて。すぐ壊されちゃうんです。そのときに「やりがいないなぁ…」って思って。それでリーマンショックのあとに方向転換をしたの。リノベーションの仕事自体は会社を作る前からやってたんですけどね。



――それにしても廃材ってだけじゃない、独自のスタイルが確立されてますよね。
丸野
結構、言われるんだけども、本人はわかってないんですよね(笑)。デザインのこだわりってものは無くて。デザインとか指示していないのでね。お客さんが「こういうのに暮らしたい」っていうのを聞いて作っているだけなんです。設計事務所でもデザイナーの集まりでもないから。お客さんの要望聞いてったらそうなっていったっていうことなんですよね。
――聞いたことを現場で考えながら作っていってく感じですかね。
丸野
そう。最近言われるんですよね。「ゆくい堂っぽい」とか「ゆくい堂みたいなのがいいです」とか言われるんですけど、本人がどう作ってるかわかってないっていう(笑)。同業者にも言われるんですよね。…うちっぽいって何なのでしょうね?
――意図せずにブランドになっちゃってきてるんですかね。
丸野
意図せずにデザイン…何か、偏ってるのかも知れないですね、好きな方に。根本的にはこういうの好きですからね。スタッフはそういうわけじゃ…好きなわけじゃないのかも知れないですけどね(笑)。

――新しい事務所は広くていいですね。ここに決めた理由を聞かせて下さい。
丸野
以前は事務所と倉庫と駐車場、別々にあったのをひとつにまとめました。事務所の広さ自体は前とほとんど変わらないんだけど、倉庫は広いからスタジオ貸したりしています。CM撮影とか趣味の教室とかに。まだそんなに認知されてないけど、リピーターが増えてきてますね。
――それはスタジオ代が安いんじゃないですか?
丸野
いや、逆に高いんじゃないかな?
――それでも借りる理由ってなんですかね?
丸野
他に無いじゃない?こんな空間。サイト見て直接連絡して借りてくれてますね。
――本業はどんな感じですか?
丸野
今でも半年位待っていただいてるのだけど「これでうちが儲からないんじゃ、どこの会社もやっていけないよ!」ってくらい、儲かってはいないですね(笑)。
好きなもの、おいしいもの、楽しいこと…全部やりたいよね


本と植物と雑貨のお店。シェアスペースは展示会やワークショップとしての利用も可能。
丸野
そうそう。最近、屋上でバーベキューやってます!上野のビルの屋上で手ぶらでバーベキューなんて解放感があっていいじゃない?場所貸だけもするし、焼き手(バーベキュー協会の方が焼きにきてくれます)を手配することもできるし。このビルの空いてるところは全部貸してます。最近、もはや何屋だかわからなくなってきてます(笑)。好きなもの、おいしいもの、楽しいこと…全部やりたいよね。
――本屋さんの空間も素敵ですよね。カフェもあって。またグリーンが多いですね。
丸野
グリーンは2Fのユナイテッドフラワーズさんなんだけど、チランジア系は千葉の生産農家さんのところに僕が買付に行ったの。こんなにグリーンがある本屋は無いよね。本屋なのに(笑)。チランジアはそのへんのグリーンショップより豊富だと思います。このビルは、本当にいいですよ。元々はメッキ工場跡…まぁ、廃墟だったんですけどね(笑)。
――クレームが出そうなくらいの廃墟でしたよね。建物をよく知ってる方じゃないと貸せないくらいの。まあ僕は安心してご紹介しましたけど。丸野さんだし(笑)。最初、どう思いました?
丸野
みんなそういうの怖がるんだけど、実はそういうの関係ないんですよね。こうやって出来上がってみたら「あぁ~なるほどね~!」ってなるんですけどね。もう…こんな物件は無いですよね。お宝ですよね。「おぉ!」って(笑)。廃墟から完成までに8ヶ月かかりましたよ(笑)。うちのスタッフとアルバイト、あと気の合う大工さんに手伝ってもらいながらね。


――最後に、このビルの貸テナント部分、二件募集してるんですよね?どんな方に入ってもらいたいですか?
丸野
う~ん…やっぱり「ものつくり」の人達に入ってほしいですね。それに限ってるわけじゃないんですけどね。今、靴造り、服造りの人が入ってるから帽子とかアクセサリーとか…何か作ってる人がいいんじゃないかなぁ~と思います。

語り手:丸野 信次郎(ゆくい堂株式会社)
聞き手:岩間 健一(浅草不動産株式会社)
書き手:木村 淳子(浅草不動産株式会社)
取材日:2016.01.15